作品紹介
フォックスキャッチャー/Foxcatcher
2014年 アメリカ
時間:130分
ジャンル:バイオグラフィ、ドラマ、スポーツ IMDbより
監督:ベネット・ミラー
ジョン・デュポン :スティーヴ・カレル
マーク・シュルツ:チャニング・テイタム
デイヴ・シュルツ:マーク・ラファロナー
あらすじ
大学のレスリングコーチを務めていたオリンピックメダリストのマーク(チャニング・テイタム)は、給料が払えないと告げられて学校を解雇される。失意に暮れる中、デュポン財閥の御曹司である大富豪ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)から、ソウルオリンピックに向けたレスリングチーム結成プロジェクトに勧誘される。同じくメダリストである兄デイヴ(マーク・ラファロ)と共にソウルオリンピックを目指して張り切るが、次第にデュポンの秘めた狂気を目にするようになる。
日本と世界の評価
評価
Yahoo!映画:3.54 評価800件 2019/5/12
IMDb:7.0(評価5換算:3.48) 評価125617件 2019/5/12
Rotten Tomatoes 2019/5/12
TOMATOMETER:88% 評価240件
AUDIENCE SCORE:66% Average Rating:3.5 評価57269件
Metascore:81
Yahoo!映画とIMDbとRotten Tomatoes:AUDIENCE SCORE
単純平均評価:3.51
評価まとめ
良い評価:怖い、配役が良い、人間の内面を上手く描けている
悪い評価:退屈、展開が遅い、暗い、後味が悪い
評価は全体的に高いです。TOMATOMETERも88%とかなり高い。映画賞も受賞、ノミネート多数でこの評価通りの結果。スティーヴ・カレルの怖さや配役をたたえるコメントも多かった。
感想
評価が高いです。スティーヴ・カレルが怖いという意見も多いですね。確かにコメディのイメージが強いのでこの配役は意外だった。でも上手くいってましたね。配役をした人は凄いね。
ウィキペディアを見ると批評家からスティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロの演技に対する評価が高いとありますが、映画はほぼこの3人で進んでいきます。
チャニング・テイタムは「今まで演じた役の中で一番難しい役だった。」という事です。
チャニング・テイタム演じるマーク・シュルツはロス五輪のレスリング金メダリスト。
これがまた暗い。お兄さんのデイヴもまたロス五輪の金メダリスト。
金メダリストとはいえマークの生活は決して楽ではない。聞く気のない子供たちの前で講演をして20ドル。あげくに名前を兄貴と間違われる。
金メダリストでこの生活は辛いな。昔テレビでアメリカ人は金メダル取りすぎて知らない金メダリストがいるとかでカールルイスを知らないアメリカ人が居たが。そんなことを思い出した。
よくあるボクシングの映画なんかでチャンピオンになることで闇の側から光の側へ一気に躍り出るみたいなところが一切なし。
マークは金メダルを取っても暗い箱の中で鍛錬を積み続ける。
兄貴は子供二人と妻を持つ家庭人。生活は楽ではないがそれなりに幸せを感じている。
そんな兄貴との比較、コンプレックス。金メダルをとっても誰からも認められない生活。支えてくれる人がいない中で鍛錬を積み上げていく苦行。
決して猛練習シーンは出てきませんが、試合に挑むその肉体と実りの無い潤いの無い生活から息苦しさが伝わってきます。
金メダルで救われないならば何のために。そして誰のために。
唯一のつながりの様に見える、兄貴とのためになるがコンプレックスも相まってそのつながりのあまりの弱弱しさ。
ニートやっているわけじゃないですからね。金メダリストになるためのトレーニングですから。
マークの苦しみが伝わってきます。
そんな所に現れたのがジョン・デュポン。
ジョンはマークを自分の作ったレスリングチーム「フォックスキャッチャー」に来ないかと誘う。
しかしこのジョンもまた心に何かを負っていた。
ウィキペディアには統合失調症を患っているとあるが、統合失調症が原因か財閥の御曹司という立場に母親からの過干渉が原因か満たされない何かを持っているジョン。
お金でも母親からの強権的な子育てからも心満たされないジョンが目を付けたのがソウル五輪で金メダリストのコーチ席に自分が座ること。
その為に目を付けたマークとデイヴの兄弟。
自分の希望額の年俸を払ってくれるジョン、金メダルを取って初めて認められた他人からの評価。
今まで無価値にさえ思えた金メダルを取る意味や意義を語ってくれるジョンに救われた気持ちになるマーク。
しかし互いに欠けたものを補いながら金メダルを目指していくみたいなストーリーにはなりません。
物語はまた一段と暗い方向に進んでいきます。
評価でもありますがストーリーが遅い退屈とありますが、見る人によってはこの暗く重苦しい展開が退屈に感じるかもしれません。話の進み方も遅いです。
だから評価がわかれるのもわかります。じれったく感じる人もいるかもしれません。
私も初めは少し退屈で眠たくなりましたが途中からはマーク、ジョン、デイヴに見せられていきました。
監督も説明的すぎるセリフやハリウッド的時間短縮に傾かず執拗に時間をかけて撮っていくスタイルでマーク、ジョンの劣等感、絶望を伝えていく。
この3人の人間関係を無理やりに繫ぎ止めていたのがデイヴでしたがその綱渡りのような関係が重苦しい映像がこれでもかとのしかかってきます。
それをセリフではなく表情や雰囲気を通じて伝える。一番難しい役だっとあるがそれが分かるような演技だった。
アメリカの映画を通じて感じることの一つに「終わりよければ全て良し」というのがあります。どんな窮地でも決して諦めないことをアメリカ映画全般に感じ、教えられているように思うのですが。
この映画、ソウル五輪で結局金メダルを取れません。
でも仮に金メダルを取っていたとしても幸せにはなれないように思います。
ソウル五輪での試合までにマークは頑張ることの意味を結局見出すことは出来ませんでした。
ジョンも五輪のコーチ席にいる自分に違和感を感じているような表情。
自分の理想とする自分、他人が自分を見るときの理想的な自分とは程遠い自分を思い知らされコーチ席の居心地の悪さだけを感じたのかもしれません。
だからこの映画「終わりよければ全て良し」は当てはまりません。
だからと言って過程が大事だという話でもないと思います。
「終わりよければ全て良し」を体現できる精神が無いと意味がないかな。
学びがあるとしたら。
マークとジョンは不幸になる悲しき運命のような。それが悪い評価にある後味の悪さに繋がるのかもしれません。
回避できない悲しき運命への足掻きに共感や生命力を自分は感じました。
長い映画ですが面白かったです。
+0.3点で3.81点とします。
評価 3.81点